広く「舞踊」の意に用いる場合と、「舞(まい)」に対する「踊(おどり)」としてその異なる要素を区別していう場合とがある。舞が「まわる」意であるのに対し、踊は躍り上がる跳躍を主とした動きをいい、「踏」「躍」の文字をあてることもある。「舞」は古代から中世に至り、能の舞に完成され、貴族や武家階級に支持されてきたのに対し、「踊」は民衆自身が踊るのが本来の形であり、専門的でなく庶民的性格をもつ。そこに熱狂的な群のエネルギーも生まれる。平安末期からみられる念仏踊、風流踊(ふりゅうおどり)、盆踊りなどは踊の系統に属する。この系統から近世の歌舞伎踊(かぶきおどり)が誕生し、「舞」と、物まねの要素をもつ「振(ふり)」を加えて発展していった。今日でも歌舞伎舞踊が日本舞踊の古典として多数を占めるので、広義にいう舞踊の「踊」もこれをさすことが少なくない。しかし、舞踊家の活動により多くの新たな作品が生まれているので、これを不当とする声が高まっている。舞踊の語は明治末以後一般的になっていったが、舞踊の意を京坂では「舞」、江戸では「踊」といった習慣が残っている。